RCJ通信
RCJ通信 第64号(2024年12月5日)
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第64号
より良い静電気対策管理のための
RCJ通信
2024.12.5発行
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▼RCJ通信
静電気対策管理に従事する方々に向けて、日本電子部品信頼性センター(RCJ)が
開催するイベント情報をはじめ、規格の動向、対策に関するトピックス、RCJの活動を
発信するものです。
静電気対策にたずさわる方々に向けた情報を提供してまいります。
▼今月のもくじ
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【1】基板・モジュール静電気対策委員会の活動のご紹介
【2】2024年度内の資格認証セミナー、資格更新セミナー終了のお知らせ
【3】次回 RCJ ESD COORDINATOR資格認証再試験のご案内
【4】次回静電気対策従事者向けエキスパートセミナーのご案内
【5】ESD COORDINATOR資格の有効期限、維持及び更新についてのご案内
【6】静電気対策Q&A(64)
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【1】基板・モジュール静電気対策委員会の活動のご紹介
RCJでは、「基板・モジュール静電気対策検討委員会」を2017年度に設置し、現在まで
文献調査、技術的考察等を中心に調査研究活動をしてきました。また、委員の企業の
協力を得て、実験を行い、事象の評価・考察も行っています。その活動概要を報告します。
基板・モジュール品(プリント回路基板(PCB)上に実装された半導体部品)のESD
損傷が問題となっており、特に、IC単体のHBMやCDM耐性が十分高くとも、PCBに実装
された後に、ESD損傷が発生する事例が多く報告されています。この一因として、PCB
の容量(数10~1000pF)が、ICの容量(標準的な値25pF)より、かなり大きく、PCB
全体が帯電した場合、放電電流が、IC単体からの放電電流に比べ、かなり大きく、IC単体
の耐性値より大きな電流が流れることが想定されるためです。一方、ESD対策は、基板・
モジュールそれぞれに対応した固有の対策が必要で、共通の対策手法がない状況です。
また、単体レベルでは、HBMやCDM試験方法が標準化され、システムレベルでは、
IEC 61000-4-2のESD試験方法が標準化されていますが、デバイスとシステムの中間に
位置づけられるアセンブリ品やモジュールレベルのESD試験方法は、未確立です。
なお、基板・モジュールレベルのESD現象は、PCB全体を、電荷を蓄積する“デバイス”と
見なし、CDM(帯電デバイスモデル)の範疇に入ると考えられています。ただし、呼び方
としては、デバイスのCDMと異なるという意味合いで、帯電ボードイベント(Charged
Board Event(CBE))と呼ばれています。
また、IC及びその他のESD敏感性部品を実装したアセンブリ品やモジュールが不良になる
と、単体のICが不良になる場合に比べ、コスト上の損失が大きくなるので、不良発生を
抑えるESD管理が重要です。
このような状況から、RCJは、半導体デバイス設計、アセンブリ品やモジュールの設計・
製造、デバイス・モジュールの試験評価を担当する多くの幅広い専門家からなるESD対策
検討委員会を設置し、検討を進めてきました。これまでの検討結果は、「2022年度「基板・
モジュール静電気対策検討委員会」調査報告書」(R-2022-M-01:2022年3月発行)と
して、まとめています。検討内容も幅広く、またより深く考察した内容になっています。
ESDコーディネータのみなさまには、会員価格で配布しますので、ご興味のある方は手に
とって見てください。
詳しくはこちらから:https://rcj.or.jp/board-module
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【2】 2024年度内の資格認証セミナー、資格更新セミナー終了のお知らせ
2024年度は、ESDコーディネータ資格認証セミナーを5月、10月に、資格更新セミナー
を5月、9月、11月に、主任ESDコーディネータ資格認証セミナーを11月に開催いたし
ました。次回の資格認証セミナー、資格更新セミナーは、両セミナーともに2025年5月
に開催いたします。両セミナーの受講申込受付開始は、2024年3月上旬の予定です。
詳細は、ホームページ、RCJ通信でご案内いたします。
各セミナーに関するお問い合わせはこちらのアドレスにお願いいたします:info@rcj.or.jp
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【3】次回 RCJ ESD COORDINATOR資格認証再試験のご案内
RCJ ESD COORDINATOR資格認証再試験は、年に4回(2月、4月、8月、10月)
実施しております。次回は2025年1月30日(木)、1月31日(金)に実施します。
■RCJ ESD COORDINATOR資格認証再試験 ──────────────────
実施日:2025年1月30日(木)、1月31日(金): 14:00~16:00
(いずれかを選択して下さい)
受験資格:RCJ ESD COORDINATOR 資格認証セミナーの既受講者
(受講後2年間有効)
場 所:(一財)日本電子部品信頼性センター 会議室
定 員:各日6名
申込締切:2025年1月24日(金)
詳細・お申込みはこちら:https://rcj.or.jp/esdc-reexamination
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【4】次回静電気対策従事者向けエキスパートセミナーのご案内
6月、9月の開催に続き、2025年1月にエキスパートセミナーを開催いたします。
このセミナーでは、なかなか実感できない静電気の特性や挙動を実験を交えて解説します。
また静電気帯電測定や表面抵抗測定など実機を使って実際に測定していただき、測定の
問題点などを実感していただきます。工程の静電気対策に従事される方に必要とされる
静電気特性、測定技術、対策方法、管理技術などを養っていただくためのセミナーです。
■静電気対策従事者向けエキスパートセミナー ──────────────
開催日:2025年1月22日(水)、23日(木)
会 場:日本電子部品信頼性センター 会議室
定 員:8名(定員に満たなくても開催いたします)
詳細・お申込みはこちら:https://rcj.or.jp/expert-seminar
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【5】ESD COORDINATOR資格の有効期限、維持及び更新についてのご案内
本資格の有効期限、維持及び更新につきましてご案内いたします。
◆有効期限と更新セミナー受講について
ESD COORDINATOR資格の有効期限は初回登録日から3年とします。この有効期限は、
合格後に発行される認証書(A4判の紙)に記載されています。資格維持のためには、
資格登録維持年会費(年会費)の納入と、更新セミナーの受講とレポート提出が必須
です。3年ごとの更新セミナーの受講は、IEC 61340シリーズ規格の改定に伴う研修や
知識のリフレッシュの機会が必要と考えるためです。
◆資格登録維持年会費(年会費)と認証カードについて
年会費のご請求書は、毎年4月中旬に、BtoBプラットフォーム請求書から発行して
おります。資格が不要になった方は、直ちに資格辞退届のご提出をお願いいたします。
また、1年ごとに認証カード(プラスチックのカード)を発行します。認証カードの
有効期限は1年間(資格取得月~翌年の前月、すなわち、5月の認証セミナーを受講
し合格した方:7月1日~翌年6月30日、11月の認証セミナーを受講し合格した方:
1月1日~12月31日)とします。
詳細はこちらをご参照ください:https://rcj.or.jp/esdc-page
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【6】静電気対策Q&A(64)
■測定器についての質問─────────────────────
静電気を測る測定器に電界計や表面電位計などいろいろありますが、何が違うのか、
どう使い分けたらよいかなどよくわかりません。電界計、表面電位計、電荷量計それ
ぞれの違いと用途について教えてください。
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◆回答例◆
まず帯電物の表面電位の測定からご説明します。帯電物の表面電位を測定する測定器
には電界計と非接触の表面電位計があります。どちらも帯電物が形成する電界の影響
力を電位として表示します。電界計は測定器の電極が受ける電界を電位に変換して表
示しますが、電界は距離によって強度が変わり近ければ強く、遠ければ弱くなるため
測定距離を限定することで電位として表示します。つまり正確な電位測定をするには
測定距離を正確に保たなければなりません。これに対し、測定距離が変わっても値が
変化しない特性を持った測定器が表面電位計です。測定距離によって値が変化しない
ことで表面電位計と呼ばれます。どちらも帯電物の表面の電圧を測定する測定器なの
で電界計も、表面電位計もひとくくりに表面電位計と呼ばれています。規格では電界
計をelectrostatic field meter、表面電位計をnon-contacting electrostatic voltmeter
と名づけて区分しています。最近ではcontacting electrostatic voltmeterという
測定電極を帯電物に接触させて電位を測定する接触型電位計も存在しています。
それぞれに特徴があり電界計による電位の測定では測定距離を守ることが必要ですが
逆に測定距離を変えることで電界が測定できます。この測定器はシンプルな構造なの
で価格は安価です。これに対し測定距離が変化しても値が変化しにくい表面電位計は
正確に表面電位を測れることと、その特殊な機構から帯電物に測定電極をきわめて近
くまで近接させることができ、小さな面積の電位測定が可能です。こちらは距離を変
えても値が変化しないため電界強度は測定できません。またその特殊な機構のため高
価な測定器となります。このほかに帯電物に測定電極を接触させて測定する接触型表
面電位計という測定器がありますが、こちらは電極が接触した部分の電位が測定でき
るため非常に小さな部分の電位測定が可能です。しかし絶縁物の表面電位の測定には
不向きで金属部分に蓄積した電位の測定、例えばESDSの端子に現れる電位の測定等
に向いています。
帯電物に接触させて測定する測定器には電位計とは全く異なる機構の電荷量計という
ものがあります。この測定器の測定対象も金属となりますが電子デバイス等に蓄積し
た帯電電荷を測定器に吸い取り測定します。被測定物の静電容量が分かれば測定した
電荷量から対象物の帯電電圧を割り出すことができます。電界計では小さなESDS1個
の帯電電位の測定は困難ですが、電荷吸引型の電荷量計ならば測定は容易です。
静電気測定では何を測りたいのか目的意識を明確にして測定することが重要です。
上記測定器をうまく使いこなして静電気対策に役立ててください。