RCJ通信

RCJ通信 第46号(2023年6月8日)

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 第46号

より良い静電気対策管理のための
RCJ通信
                 2023.6.8発行
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▼RCJ通信
静電気対策管理に従事する方々に向けて、日本電子部品信頼性センター(RCJ)が
開催するイベント情報をはじめ、規格の動向、対策に関するトピックス、RCJの活動を
発信するものです。
静電気対策にたずさわる方々に向けた情報を提供してまいります。

▼今月のもくじ
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【1】「RCJ信頼性・ESD対策技術展示会」出展社募集のご案内
【2】第2回ESDコーディネータ大会開催決定のご案内
【3】次回 ESD COORDINATOR資格認証再試験のご案内
【4】ESD管理に関する用語解説(1)
【5】ESD対策に関連する規格の動向(42)
【6】静電気対策Q&A(46)
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【1】「RCJ信頼性・ESD対策技術展示会」出展社募集のご案内

RCJでは、電子デバイスの信頼性及びEOS/ESD/EMCに特化した「RCJ信頼性シンポ
ジウム」に併設の機器、資材、ソフトウェア等の展示会「RCJ信頼性・ESD対策技術
展示会」を開催しています。
この展示会では、信頼性技術者や生産・製造技術者、品質保証技術者等を対象に、
より進歩した静電気対策技術、信頼性評価技術、故障解析技術、信頼性向上対策の
紹介を目的としています。特に近年、各種電子デバイスが静電気の影響を受けやすく
なっており、静電気対策は必須事項となっております。これら重要な静電気対策や
解析・測定機器の展示会への来場者は、上記シンポジウムへの参加者、ESDコーディ
ネータなど静電気対策に深くかかわっている方が多く、効果的な宣伝が可能です。
また、展示会場内においては、各出展社が自社の新技術・新製品を紹介するワークショップ
も開催しています。このワークショップは、静電気対策用品、材料・計測機器等を手掛け
る企業にとって対策品選者といったキーバーソンに効果的にPRできる絶好の機会となります。
現在出展社の募集を開始しており第1回目の出展委員会を7月上旬に行う予定です。
ぜひこの機会に出展のご検討をお願い申し上げます。

信頼性・ESD対策技術展示会のWebサイトはこちら:https://rcj.or.jp/exhibition
お問い合わせメールアドレス:info@rcj.or.jp

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【2】第2回ESDコーディネータ大会開催予告

2023年10月30日、大田区産業プラザにおいて、第2回ESDコーディネータ大会を開催
いたします。ESDコーディネータ大会では、ESDコーディネータのみなさまが一堂に集い
お互いに意見交換していただくことを重要な意義と考えています。第1回以降の3年間は、
コロナ禍の影響でやむなく開催を控えておりましたが、新型コロナウイルス感染症の位置
づけが5月8日に2類から5類に移行されたことを受け、ESDコーディネータ大会の開催
を決定した次第です。
現在、ESDコーディネータ大会のコンテンツを企画しているところですが、ESDコーディ
ネータの方々向けの特別セミナーやESDコーディネータが自由に討議していただくグループ
ディスカッション等を計画しています。グループディスカッションについては、お申込み時
に希望する討議テーマなどを挙げていただくことも考えております。詳しくは次号(第47号)
のRCJ通信やホームページにてご案内させていただく予定です。お申込み受付は8月上旬を
予定しております。多くのみなさまのご参加をお待ちしております。

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【3】次回 ESD COORDINATOR資格認証再試験のご案内

RCJ ESD COORDINATOR資格認証再試験は、年に4回(2月、4月、8月、
10月)実施しております。次回の再試験は2023年8月4日(金)に実施します。

■RCJ ESD COORDINATOR資格認証再試験 ──────────────────

実施日:2023年8月4日(金) 14:00~16:00
受験資格:RCJ ESD COORDINATOR 資格認証セミナーの既受講者
    (受講後2年間有効)
場 所:(一財)日本電子部品信頼性センター 会議室
定 員:6名
申込締切:2023年7月31日(月)

詳細・お申し込みはこちら:https://rcj.or.jp/esdc-reexamination

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【4】ESD管理に関する用語解説(1)

■接地

用語解説の第一回目として、静電気管理の基本である『接地』について解説します。
今回は、静電気管理に用いられる基本規格RCJS-5-1に加えて、国際的な関連規格
IEC 61340-5-1及び米国ANSI/ESD-S20.20で用いられている接地に関する用語を
リストアップします。
まず、上述の三つの規格では、『電源系統を使用した接地』、『電源系統以外での接地』
の2種類について規定されており、第三の接地方法として『等電位接続』が規定され
ています。
RCJS-5-1では、EPAの代表的な設備例などの図面に接地が示されていますが、具体的
な接地システムに関する規定はありません。基本的には『等電位接続』によって電位差を
解消する方法について規定しています。
IEC 61340-5-1及びANSI/ESD-S20.20では、『電源系統を使用した接地』、『電源系統
以外での接地』の2種類、『等電位接続』について規定されています。IEC 61340-5-1では、
『Protective Earth』、『Functional Ground』、『Equipotential Bond』、
ANSI/ESD-S20.20では、『Equipment Grounding Conductor』、『Auxiliary Ground』、
『Equipotential Bonding』が用語として規定されています。
次回は、これらの個々の用語について解説します。

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【5】ESD対策に関連する規格の動向(42)

今回は、ANSI/ESD S11.4-2012 For the Protection of Electrostatic Discharge Susceptible Items -Static Control Bags
について解説します。
まず第1項の目的と適用範囲には、目的を電子機器輸送時の静電気と湿気から電子
機器を保護する袋の性能範囲を制定するとあり、適用範囲には、この規格は電子機器
の包装に使われる袋に適用し、揮発性物質、化学薬品、爆発物、または軍需品用の
バッグには対応していない、としています。第2項が引用規格でここに記載されている引用
規格に従って試験することになっているので、この規格に従って試験するときは、ここに記載
される引用規格が必要です。第3項が用語の説明、第4項が人体安全となっています。
第5項からバッグについての記述となっていて、まずバッグを5つのレベル分けをしています。
レベル1がESDと湿気に弱いデバイス包装用防湿バッグ、レベル2がその他の一般部品包装
用防湿・静電気保護バッグ、レベル3が静電気シールドバッグ、レベル4が導電性バッグ、
レベル5が静電気拡散製バッグとなっています。第6項はバッグの標識について記載されて
いて、ANSI / ESD S8.1で定義されている1~5それぞれのレベルに匹敵するレベル番号と
ESD保護記号を明記すべきとし、またレベル1と2ではIPC / JEDEC J-STD-033で定義
される湿度感度識別記号を記載しなくてはならないとしています。またすべてのバッグに
メーカー名と製造年月日、ロッド番号による追跡可能情報の明記が必要としています。
第7項は1~5各レベルの性能分類表になっていて、どのレベルの袋はどのような性能が
要求されているかが表記されています。第8項が各試験方法についての説明です。
8.1が透湿性の試験(ASTM F1249、ASTM F 392)、8.2が突き刺し強度試験
(MIL-STD-3010 test method 2065)、8.3がシール強度(ASTM D882.)、
8.4が厚さ測定(MIL-STD-3010 test method 1003)、8.5が標識の印刷強度
(IPC-TM-650 Test Method 2.4.1.)、8.6が光透過性測定(Tobias Associates TBX-MC or equivalent)、
8.7がシリコン汚染(ASTM E168)とそれぞれの試験方法が記載されています。
この規格では包装材(袋)の分類と試験方法についての規定だけでレポートの記載事項等の
項目はありません。また付属書も改訂履歴のみとなっています。
次回はANSI/ESD STM 12.1 2019 椅子の抵抗測定について解説します。

規格についてはこちらもご参照ください:https://rcj.or.jp/esd-standard

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【6】静電気対策Q&A(46)

■帯電プレートモニタについての質問 ─────────────────────

材料や工具の評価に帯電プレートモニタを使用していますが、工具の評価で規格に示される
接地した人体が工具の柄を持って先端を帯電プレートに接触させる方法で測定を行った際、
最初は速やかに減衰するのですが、途中まで下がると減衰が非常に遅くなってしまいます。
帯電プレートモニタの不具合なのでしょうか。

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◆回答例◆

帯電プレートモニタは大きさ約15cm×15cmで20pF±2pFの金属プレートに電圧が1000Vに
相当する電荷を溜めて、溜めた電荷を減衰させることによるプレートの電圧を測定し減衰させる
能力を測定する測定器です。この金属プレートに溜めた電荷を減衰させる方法には空気イオン
による電荷減衰や漏洩による電荷減衰があります。
ご質問の工具の帯電プレートモニタ減衰試験は、接地した工具を経由してプレートに溜まった
電荷を漏洩させ減衰時間を測る試験方法です。ご質問では一旦電圧は速やかに下がったと
いうことで帯電プレートからの電荷は一旦工具へ流れていることが分かりますが、途中から流れ
方が変わったということになります。これは工具を構成する材料の一部が電荷を吸収した後、
その先の接地へはゆっくりしか電荷が流れなかったという現象です。つまり帯電プレートに接触
した工具の一部である先端の金属部分には電荷が吸収されたが、接地端子までの柄の部分
の抵抗が非常に高く、工具が吸収した電荷を接地へ流すことができなかったということです。
静電気現象を認識するための重要な要素に静電容量があります。帯電プレートの構造で
ご説明したように帯電プレートは20pF±2pFという静電容量を持っています。
工具にも静電容量があり、電荷が漏洩する際に金属など電荷の流れやすい導体と帯電
プレートが接触すると一旦工具の導体部分に電荷が移動しますが、帯電プレートと導体部分
が同じ電圧になると帯電プレートの電荷は移動しなくなります。
例えばプレートの静電容量が20pFで工具の導体部分も20pFだったとすると帯電プレートに
1000V溜まっていた電荷が工具の導体部分に流れ、同じ静電容量のためどちらも500Vに
なった時点で電圧の減衰が止まります。柄の部分が少しでも電荷が流れればそれからゆっくり
電荷が流れて電圧は減衰しますので質問の工具の電荷減衰能力はこのゆっくりした特性と
いうことになります。これが今回ご質問の現象です。
もう一つ、ご質問とは別の現象ですが、静電容量は周囲のものの距離と深い関係を持つ
要素ですので、帯電プレートに何かが近づくと帯電プレートの静電容量が大きくなります。
20pFの帯電プレートに何かが近づいて40pFに容量が増えると1000Vの電圧は半分の500V
になります。本来の減衰が起きていなくとも1000Vから電圧が下がり計測が始まってしまい
測定の誤差になります。帯電プレートを使用した減衰特性を検証する際は材料や工具の
近づけ方にも注意が必要です。