RCJ通信
RCJ通信 第10号(2020年6月4日)
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第10号
より良い静電気対策管理のための
RCJ通信
2020.6.4 発行
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▼RCJ通信
静電気対策管理に従事する方々に向けて、RCJが開催するイベント情報をはじめ、
規格の動向、対策に関するトピックス、RCJの活動を発信するものです。
静電気対策にたずさわる方々に向けた情報を提供してまいります。
▼「新型コロナウイルス感染予防対策」について
日本電子部品信頼性センターが企画しているセミナー、イベント等は、政府の発表
と感染拡大の状況を鑑みて延期、もしくは中止することがあります。
企画を変更する際は事前に当センターがお送りするメールマガジン、ホームページ
のトピックでお知らせいたしますのでご留意ください。
▼今月のもくじ
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【1】静電気対策資材登録制度のご案内
【2】基板・モジュール静電気対策委員会の活動のご紹介
【3】ESD対策に関連する規格の動向(6)
【4】静電気対策Q&A(10)
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【1】静電気対策資材登録制度のご案内
IEC TR61340-5-1では、ESDコーディネータは、規格の要求事項を実践、文書化、維持、
プログラムの順守を検証する責任を有する者とされています。このプログラムの計画
には、以下が含まれています。
・教育/訓練・順守の検証
・接地/ボンディングシステム
・人体接地
・EPA 要求事項
・包装システム・マーキング
この中で、ESD保護領域(ESD Protective Area:EPA)を構築する資材には、さまざま
な方法や資材が存在し、それを選択することも ESDコーディネータの重要な責務となり
ます。この業務は、組織内のESD管理を行う上で非常に重要なものですが、多くの場合、
資材評価を伴い煩雑なものとなることがあります。そして、この測定・評価は、IEC61340
シリーズで行う必要があるために、専門の知識や装置が必要になることもあります。
また、静電気の測定は、低湿度管理を必要とするために、特殊なチャンバーなどを必要
とすることが予想されます。
そこで、RCJあるいは、RCJが指定した公的な機関で測定を行い、その測定データを
ウェブ上で公開することを提案します。すなわち、静電気対策用資材について、公的
機関による測定結果を基にして、RCJのホームページに結果をリストアップし、公表し
ていこうとするものです。これにより、ESDコーディネータによる資材選択の簡素化を
手助けしようとするものです。この登録は、IEC 61340シリーズで、定められた測定・
評価方法、あるいは、各Working Group(WG)で、検討中あるいは、検討した測定・
評価方法を使用し、RCJもしくは、その指定する測定機関で測定した結果を示すもので、
資材の特性や信頼性に対して、保証するものではありません。登録は、あくまでESD
コーディネータが、IEC 61340に従って、EPA内で使用する資材選択を容易に行うことを
目的とし、情報の共有化を図るものです。
詳しくはこちらから:https://rcj.or.jp/material
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【2】基板・モジュール静電気対策委員会の活動のご紹介
RCJでは、「基板・モジュール静電気対策検討委員会」を2017年度に設置し、現在ま
で文献調査、技術的考察等を中心に調査研究活動をしてきました。その活動概要を
報告します。
基板・モジュール品(プリント回路基板(PCB)上に実装された部品)のESD損傷が
問題となっており、特に、IC単体のHBMやCDM耐性が十分高くとも、PCBに実装された
後に、ESD損傷が発生する事例が多く報告されています。この一因として、PCBの容量
(数10~1000pF)が、ICの容量(標準的な値25pF)より、かなり大きく、PCB全体が
帯電した場合、放電電流が、IC単体からの放電電流に比べ、かなり大きく、IC単体の
耐性値より大きな電流が流れることが想定されるためです。一方、ESD対策は、基板・
モジュールそれぞれに対応した固有の対策が必要で、共通の対策手法がない状況です。
また、基板・モジュールのESD耐性評価方法も未確立です。このような状況から、基板・
モジュールのESD対策を検討対象として、委員会活動を実施してきました。注目した
主な課題は、
①単体のICレベルと基板・モジュールレベルのESD現象の違い、特に、放電波形の違い、
②基板・モジュールレベルのESD対策
です。なお、基板・モジュールレベルのESD現象は、PCB全体を、電荷を蓄積する“デ
バイス”と見なし、CDM(帯電デバイスモデル)の範疇に入ると考えられています。
ただし、呼び方としては、デバイスのCDMと異なるという意味合いで、帯電ボードイ
ベント(Charged Board Event(CBE))と呼ばれています。
これまでの検討結果は、「R-30-M-01:「平成30年度 基板・モジュール静電気対策
検討委員会」調査報告書」(2019年3月発行)として、まとめています。ESDコーディ
ネータのみなさまには、会員価格で配布しますので、ご興味のある方は手にとって見て
ください。
詳しくはこちらから:https://rcj.or.jp/board-module
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【3】ESD対策に関連する規格の動向(6)
今回は、IEC61340 Electrostatics Part 2-3 Edition 2.0 2016-06: Methods of test
for determining the resistance and resistivity of solid planar materials used
to avoid electrostatic charge accumulationについての解説です。現在はRCJS 5-1
付属書Jとして発行されています。
この規格は静電気対策に使用される個体材料の抵抗測定方法について説明しています。
過去のバージョンから改訂された理由は、包装資材などには表面積が小さいものが多
いのにもかかわらず規定されている測定電極が約63mmと大きく、小さな面積の測定が
できないため、小さい電極での測定方法が必要になったことによります。2項の参考
規格リストにはIEC 62631 3-1、3-2、3-3、ISO 1853、2951、3915、7619-1等各種材料
の抵抗測定方法の規定が挙げられています。3項は用語集、4項は抵抗測定における
環境設定の重要性が説明されています。5項は試験方法の選定について、6項と7項
は材質別の参照規格について述べられています。8項から実際に使用する測定器、電
極の仕様および測定方法について解説されています。8項は従来の大きな面積に対す
る測定です。この項は電極構造や測定方法、測定対象、目的別測定方法など細かく説
明されています。9項は8項の測定結果を表面抵抗率に換算する方法について、10項
が新しく設定された小さい電極での測定方法につて説明されています。11、12項は測
定結果の妥当性評価と報告書のまとめ方についてです。最後は参考として測定器の校
正方法について説明されています。いずれにしてもこのIEC 61340 2-3 2016の内容は
RCJS 5-1付属書Jで和文に訳されていますのでこちらもご参照ください。
規格についてはこちらもご参照ください:https://rcj.or.jp/esd-standard
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【4】静電気対策Q&A(10)
■測定器についての質問 ─────────────────────────
イオナイザを評価する帯電プレートモニタのプレートにはいろいろなサイズのものが
ありますが、どれを使用してもよいのでしょうか。大きなプレートと小さなプレート
でほとんど同じ数値が出ることがあります。
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◆回答例◆
規格では帯電プレートの大きさ及び、帯電プレート自体の静電容量、測定器本体に
接続したときの静電容量などが規定されています。帯電プレートはイオナイザが生成
したイオンを吸収するための電極です。このため大きさが異なると、たくさん吸収で
きる、少ししか吸収できないという差が生まれます。つまり大きなプレートの方が小
さいプレートよりもたくさんイオンを吸収して早く電圧が下がることになります。
大きなプレートは一般的に静電容量が大きくなり、小さいプレートは静電容量が小さ
くなる傾向があります(一部変わらないものもあります)。大きな静電容量には電圧が
同じであれば小さな容量の電極に比べ電荷はたくさんたまっています。そうすると先
ほどのプレートの大きさによる減衰の差と相反して小さいプレートの方がたまってい
る電荷が少ないので、早く電圧が減衰する可能性が出てきます。これが判断を惑わす
原因で必ずしも小さいプレートは時間がかかるとは限らないことになります。これに
加え、イオナイザのイオンを吹き出す面積が広いか狭いかも関係し、広い吹き出し口
のイオナイザを大きいプレートで測定したときと、小さいプレートで測定したときに
は時間差は大きくなります。しかしノズルタイプのような狭い吹き出し口のイオナイ
ザでは、その差は小さくなります。
以上のことから総じていえることは、大きいプレートと小さいプレートの比較は一概
に一つの定数で換算することはできず、状況ごとに換算の係数を決めないと妥当な評
価にならないということです。規格に従った測定をするのであれば規格に従った大き
さと静電容量の帯電プレートが必要です。