RCJ通信

RCJ通信 第48号(2023年8月3日)

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 第48号

より良い静電気対策管理のための
RCJ通信
                 2023.8.3発行
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▼RCJ通信
静電気対策管理に従事する方々に向けて、日本電子部品信頼性センター(RCJ)が
開催するイベント情報をはじめ、規格の動向、対策に関するトピックス、RCJの活動を
発信するものです。
静電気対策にたずさわる方々に向けた情報を提供してまいります。

▼今月のもくじ
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【1】第2回ESDコーディネータ大会開催のご案内(2)
【2】次回 RCJ ESD COORDINATOR資格認証セミナー開催のお知らせ
【3】次回 RCJ ESD COORDINATOR資格更新セミナー申込受付中です
【4】ESD管理に関する用語解説(3)
【5】ESD対策に関連する規格の動向(44)
【6】静電気対策Q&A(48)
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【1】第2回ESDコーディネータ大会開催のご案内(2)

10月3日に開催予定のESDコーディネータ大会内容についてお知らせいたします。
前回のRCJ通信でもご案内させていただきましたが、第2回ESDコーディネータ大会の内容
としては、セミナーとグループディスカッションを予定しています。
セミナーは午前中の2時間程度を使って、今年7月に行われましたIEC TC101委員会で討議
された61340 5-1 一般要求事項、61340 5-4 適合性検証、それぞれの最新情報をご紹介させて
いただく予定です。
グループディスカッションでは、少人数のグループを組んでいくつかのテーマをご用意させ
ていただこうと思いますが、お申込みフォームにご希望のテーマをご記入いただけるように
設定いたします。決定事項ではありませんが、以下のテーマ等について討議をしていただ
こうと思います。
・人体接地の問題点
・5-1規格運用での問題点
・定期点検と内部監査
・静電気現象と対策での困りごと
・管理用アイテム使用上の問題点

午後から上記グループディスカッションと各グループで討議した纏めの発表と最後にQ&Aを
行って、16:00から情報交換の時間を1時間半程度設けたいと思います。会場には何社か
メーカによる展示も予定しています。各出展社に出展品への疑問点などを会話していただける
よう用意します。日頃の問題や不安な点等、他のESDコーディネータの方々と情報交換して、
静電気対策にお役立てください。
皆様のご参加をお待ちしております。

詳細はこちら:https://rcj.or.jp/esd-convention

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【2】次回 RCJ ESD COORDINATOR資格認証セミナー開催のお知らせ

資格認証セミナーの次回開催日時をお知らせいたします。
「第43回 RCJ ESDコーディネータ資格認証セミナー」は、以下の日程で開催いたします。
  
■第45回RCJ ESD COORDINATOR資格認証セミナー ──────────────

開催日時:2023年10月16日(月)、17日(火)
会場:大田区産業プラザ(東京都大田区南蒲田1-20-20)
定員:150名

詳細・お申し込みはこちら:https://rcj.or.jp/esdc-seminar

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【3】次回 RCJ ESD COORDINATOR資格更新セミナー申込受付中です

ESD COORDINATOR、主任ESD COORDINATOR資格は、3年毎に更新することになっています。
資格更新セミナーは、ESD対策技術(規格改定を含め)のリフレッシュの機会を与える
ことを目的としています。
今回は、資格有効期限が以下(1)(2)の方で、資格を維持されるESDコーディネータ、
主任ESDコーディネータの方が対象です。

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(1)2023年6月30日
(2)2023年12月31日
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ご自身の有効期限は、前回の更新時に発行された認証書(A4判の認証書で、資格登録
維持年会費を納入された後に毎年発行される認証カードとは異なります)をご確認ください。
ご自身の有効期限が不明な方は、事務局にお問い合わせください。
有効期限切れの前後4回の更新セミナーの受講が可能です。

「第46回 RCJ ESD COORDINATOR資格更新セミナー」は、YouTube LiveでWeb同時配信
いたします。受講者のみなさまに事前にお知らせしますYouTubeの専用URLにアクセスしていただ
くだけで受講いただけます。インターネット接続環境とYouTubeをご覧になれるパソコン等があれば、
特別な設定なく受講いただけます。開催日時および会場は以下の通りです。

第46回 RCJ ESD COORDINATOR資格更新セミナーのご案内
日時:2023年9月8日(金) 10:00~16:30
会場:大田区産業プラザ 4階コンベンションホール(東京都大田区南蒲田1-20-20)
    及びYouTube Live配信によるWeb受講
申込み締切日:2023年9月1日(金)
 
詳細・お申し込みはこちら:https://rcj.or.jp/update-seminar

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【4】ESD管理に関する用語解説(3)

■接地

今回は、電源系以外の接地について解説します。
これまで述べていますように、RCJS-5-1では具体的な電源系を用いた接地及び電源系以外の接地の
両方について規定がありません。このように、RCJS-5-1は接地システムについての記載はなく、
すべて等電位接続を前提に静電気対策を行うこととしています。つまり、人体を含む物体間で電位差
が存在しなければESDは発生しないであろうことをよりどころとしています。
IEC 61340-5-1では、『Functional Ground』という用語で規定されており、日本語訳は『機能接地』
としています。ANSI/ESD-S20.20では、『Auxiliary Ground』という用語で規定されており、
日本語訳は『補助接地』としています。それぞれの定義(原文+和訳)は、次のようになっています。
●IEC 61340-5-1:Functional Ground
(原文)terminal used to connect parts to ground for reasons other than safety
(和訳)安全上以外の理由から部品を接地に接続するために使用される端子

●ANSI/ESD-S20.20:Auxiliary Ground
(原文)A separate supplemental grounding conductor for use other than general equipment grounding.
   (ESD ADV 1,0-2017 “Glossary”より抜粋)
(和訳)一般的な機器(装置)の接地以外に使用するための独立した補助接地導体

もちろん、両規格とも上述の電源系以外の接地とともに等電位接続もESD対策として使用することを
許容しており、IEC 61340-5-1では『Equipotential Bond』、ANSI/ESD-S20.20では『Equipotential Bonding』
と呼ばれており、定義は次のようになっております。
●IEC 61340-5-1:Equipotential Bond
(原文)electrical connection of conductive parts (or items used to control ESD) so that they are at substantially
     the same voltage under normal and fault conditions
(和訳)両者の電位が同じになるように、導電性部品(または ESD 管理用アイテム)間を電気的に
    接続すること
なお、ANSI/ESD-S20.20では定義しておりませんが、RCJS-5-1やIEC 61340-5-1と同じ定義と考えて
問題ないものと思います。

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【5】ESD対策に関連する規格の動向(44)

今回はANSI/ESD S20.20-2021 Protection of Electrical and Electronic Parts, Assemblies and Equipment (Excluding Electrically Initiated Explosive Devices)
について解説いたします。
この規格はIEC61340 5-1やRCJS 5-1の基となっている規格です。大局的な内容はよく似ているの
ですが、設定値など細かい部分で差異があります。この規格の目的ですが、ESD管理プログラムを
確立、実施、維持するための要件の提供としており、適用範囲はHBM100V、CDM200V以上で
損傷を受けやすいESDSの取扱い時とし、爆発や可燃性液体、粉体には適用しないとしています。
3項は引用規格でこれまで紹介してきた規格などが列挙されています。4項は用語解説、5項は
他のシリーズ同様人体安全についてで、他の人体安全の規格には置換えてはならないことや、
人体安全が第一と解説されています。6項から主題のESD管理プログラムについて書かれており、
6.1項 ESD管理プログラムの要求事項、6.2項 ESD管理プログラム管理者の任命、6.3項 ESD管理
プログラムの調整について説明されています。7項からESD管理プログラム運用についての要求と
なっており、7.1項は製品認定や、コンプライアンス検証、接地システム等の要件を含んだESD
管理プログラムの計画について、7.2項はESDSを取扱う関係者への教育訓練、7.3項は製品
(ESD管理アイテム)の認定計画、7.4項 コンプライアンス検証(定期点検)計画では定期点検
するためのアイテムと頻度を決定しなければならないとしています。次の8項からESD管理用
アイテムの管理値や試験方法についていくつかのグループに分けられてそれぞれが表とともに
解説されています。8.1項は接地及び等電位接地について、8.2項は人体接地についてでリストスト
ラップ、人体接地可能は衣服、履物/床システムの製品認証試験の方法とコンプライアンス検証時
の試験方法、限界値が定義されています。8.3項はEPAについて細目にわたり説明されています。
8.3.1項 絶縁体の取扱い、8.3.2項 絶縁された導体、8.4項 包装、最後の8.5項は標識となっています。
規定は8.5項まででその後には多くの参考情報が記載されています。まず付属書Aでは参考規格の
紹介として自動機、手袋、コンベア、ESDハンドブックの規格が紹介されています。付属書Bは
ESDS耐性試験方法の紹介でHBM、CDM、MMに関する規格が紹介されています。付属書Cは
規格の調整方法と例について、付属書Dが関連規格の紹介になっています。付属書Eは方向性に
ついてで、1.コンポーネントの対策閾値計画、2.工程評価について解説されています。最後の
付属書Fはこの規格の改訂履歴です。
長くなりましたが以上ANSI/ES S20.20の概要説明です。
規格の解説は今回で一旦休止とさせていただき、次号から連載は用語解説とQ&Aの2項目となり
ます。

規格についてはこちらもご参照ください:https://rcj.or.jp/esd-standard

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【6】静電気対策Q&A(48)

■イオナイザについての質問 ─────────────────────

真空容器の中にうまくイオナイザが組み込めず苦慮しています。真空中で使用できる良いイオ
ナイザはありませんか。

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◆回答例◆

高真空のような気体がほとんどない場合はもともとイオンを生成するための材料がありません
ので使用できるイオナイザはありません。中真空程度になると気体分子が存在しますので
これを電離させて静電気除去を行うことが可能です。一般的な作業環境で使用される電圧印加
型のイオナイザ(卓上ファンタイプやノズルタイプなど)は中真空中では使用することができ
ません。放電電極と対向電極(接地電極など)との間に高電圧が印加されると、イオンが生成
される前に電極間で火花放電が発生してしまいイオンが生成されません。中真空環境で有効な
イオナイザには光電離を利用した紫外線タイプが有効です。真空チャンバー内に紫外線を投影
することでチャンバー内の少量の気体がイオン化します。逆にこの紫外線タイプは大気圧中で
は気体が濃すぎて電離できる空間は光を発した近傍のみとなり、しかも酸素の多い気圧中では
オゾンがたくさん発生し人との共存が難しくなります。ちなみにこれと似た状況で窒素ガス
バージをした空間や通常のイオナイザに窒素ガスを投入した場合も効果的なイオン生成ができ
ません。窒素ガスの電離電圧が大気よりも低いため通常のイオナイザに印加する電圧ではコロ
ナ放電を超えて電流ばかりが流れてしまい効果が低減します。大気中で印加する電圧よりも低い
電圧に設定することで対応可能となります。