RCJ通信

RCJ通信 第39号(2022年11月10日)

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 第39号

より良い静電気対策管理のための
RCJ通信
                2022.11.10 発行
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▼RCJ通信
静電気対策管理に従事する方々に向けて、日本電子部品信頼性センター(RCJ)が
開催するイベント情報をはじめ、規格の動向、対策に関するトピックス、RCJの活動
を発信するものです。
静電気対策にたずさわる方々に向けた情報を提供してまいります。

▼「新型コロナウイルス感染予防対策」について
日本電子部品信頼性センターが企画しているセミナー、イベント等は、政府の発表と
感染拡大の状況を鑑みて延期、もしくは中止することがあります。
企画を変更する際は事前に当センターがお送りするメールマガジン、ホームページの
トピックでお知らせいたしますのでご留意ください。
RCJ ESD COORDINATOR資格認証、資格更新セミナーでの新型コロナウイルス感染予防
対策につきましては、ホームページをご参照ください。

詳細はこちら:https://rcj.or.jp/oshirase/2651

▼今月のもくじ
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【1】「第32回RCJ信頼性シンポジウム/信頼性・ESD対策技術展示会」開催報告
【2】ESD COORDINATOR 資格の有効期限、維持及び更新についてのご案内
【3】主任ESD COORDINATOR資格のご案内
【4】2022年度ESDコーディネータ資格登録維持年会費ご入金のお願い
【5】ESDコーディネータ有資格者の登録情報の変更届けについてのお願い
【6】ESD対策に関する規格の動向(35)
【7】静電気対策Q&A(39)
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【1】「第32回RCJ信頼性シンポジウム/信頼性・ESD対策技術展示会」開催報告

今年のRCJ信頼性シンポジウムとESD対策技術展示会を10月26日、27日の2日間
にわたり、大田区産業プラザ コンベンションホールにて開催いたしました。シンポジウムは
1日目が主にESD関係、2日目が主に信頼性関係のプログラムを組み、会場はご招
待の方を含め多くの方のご参加をいただき盛況となりました。
1日目の夕方にはコロナ禍の影響で2年間開催できなかった情報交換会(懇親会)
をシンポジウム会場のコンベンションホールで開催いたしました。今まで立食のバイキング
形式で行っていた懇親会を、着席、個食のご提供で開催しましたため、多くの方にご出
席いただけるか心配いたしましたが、ほぼ満席のご参加をいただき開催者としてうれしい
限りです。
展示会も会場が広くなり会場内にはワークショップ会場と談話コーナーも設け、談話コー
ナーではコーヒーサービスも復活いたしました。今年は全体の出展社数が減ってしまいま
したが、新しくご参画された企業もあり、コロナ禍が解消した暁には出展社が増えてくれ
ることを願っております。昨年予定していた出展社インタビュー動画の掲載は、撮影した
カメラの不具合から全社の動画記録ができずYouTubeへのアップロードを断念しました
が、今年はプロのカメラマンを雇って撮影したのできれいな画像と音声を取ることができ
ました。後程各社の画像を編集してYouTubeにアップロードし、RCJホームページのそれ
ぞれの出展社紹介のコーナーに視聴用URLを掲示する予定です。
シンポジウムご発表の皆様、シンポジウム運営にご協力いただいた皆様、シンポジウム
ご参加の皆様、そしてご出展の皆様のお陰で無事シンポジウム・展示会を開催すること
ができました。この場を借りてお礼申し上げます。

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【2】ESD COORDINATOR 資格の有効期限、維持及び更新についてのご案内

有効期限につきましてお問い合わせいただくことがありますので、改めて本資格の有効
期限、維持及び更新につきましてご案内いたします。
ESD COORDINATOR資格の有効期限は初回登録日から3年とします。資格の更新
のためには、再度のセミナー受講が必要です。有効期限の半年前から半年後、1年間
の受講期間があり、どのセミナーを受けることも可能ですが、資格有効期限は資格を取
得した年から始まる3年の周期が繰り返されます。たとえば、2021年5月の認証セミ
ナーに合格した場合は、有効期限は2021年6月~2024年6月です。更新セミナーは
1 日間を予定し、試験はありません。ただし、レポート提出の評価結果を以て合格とし
ます。不合格の場合は再提出が必要になります。これは、IEC 61340 シリーズ規格の
改定に伴う研修や知識のリフレッシュの機会が必要と考えるためです。
年度(4月から翌年3月まで)ごとに資格維持として、維持料(年会費)をお支払
いいただく必要があります。但し、初回登録年度は維持料は必要ありません。
また、1年ごとに認証カード(プラスチックのカード)を発行します。認証カードの有効期限
は 1年間(資格取得月~翌年の前月)とします(注:維持1年、更新3年)。
会費請求後1年を過ぎて年会費の納入が無い場合は、有効期限内でも資格が失効
します。資格が不要になった方は直ちに資格辞退届のご提出をお願いいたします。
(注:会費年度(4 月から翌年 3 月まで)と認証カードの有効期間(資格取得月
~翌年の前月)は異なります。但し、認証カード有効期限を7月以降の受講者は翌
年の12 月 31 日、6 月以前の受講者は翌年 6 月 30 日に統一します。)

詳しくはこちらをごらんください:https://rcj.or.jp/esdc-page

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【3】主任ESD COORDINATOR資格のご案内

ESD COORDINATOR資格認証制度では、ESD COORDINATORと
主任ESD COORDINATORの認証を行います。
ESD COORDINATORとは、最低限 IEC 61340 シリーズの 5-1(静電気現象からの
電子デバイスの保護-一般要求事項)(現在はその改訂版の RCJS-5-1)に記述さ
れた ESD 管理作業に関する知識を有するESD 管理の専門家で、施設内の ESD に関
連することに対して責任を持つ技術者です。
主任ESD COORDINATORは、IEC 61340-5-1(現在はその改訂版の RCJS-5-1)を
含めその他の IEC61340 シリーズ規格の知識を有し、さらに豊富な実務経験を有し、
ESD COORDINATORや ESD作業従事者の教育・訓練を行い、社内の指導的立場に
立ち、全社的な ESD 管理に責任を持つ技術者です。ESD COORDINATOR認証取得が
前提です。
一般に、ESD COORDINATORと主任ESD COORDINATORは、ESDに関する諸問題に
機動的に対処するため、日常の担当業務や職制に規制されることなく、別系統の組織
と権限を持ち、独立に活動できることが推奨されます。
主任ESD COORDINATOR資格認証セミナーは、年1回開催され、今年で18回を数え
ます。第18回 RCJ 主任ESD COORDINATOR資格認証セミナーは、2022年11月24、
25日に開催いたします。

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【4】2022年度ESDコーディネータ資格登録維持年会費ご入金のお願い

日頃、弊センターの活動にご理解を賜りまして誠にありがとうございます。
2021年度より、資格登録維持年会費のご請求書をBtoBプラットフォームを介してPDF
にてお受取りをお願いしておりますが、資格を維持される方で、納入がお済みでない方は、
至急、資格更新、認証カードの発行につきまして、ご連絡をいただきたくお願いいたします。
2022年度のご請求書は、4月19日に発行しておりますが、BtoBプラットフォーム請求書
からのご案内のメールが迷惑メールに振り分けられていたというご連絡をいただいております。
メールをお受取りになっていらっしゃらない方は、お手数ですが、受信ボックス以外のフォルダ
もご確認いただきたくお願いいたします。
ご請求書の再発行を希望される場合は、下記のメールアドレスにご連絡をお願いいたし
ます。
この資格登録維持年会費は、ESD COORDINATOR資格認証制度を運営していくため
の重要な資金となっております。何卒ご理解の上ご協力の程お願い申し上げます。

再発行等のお問い合わせはこちらのアドレスにお願いいたします:info@rcj.or.jp

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【5】ESDコーディネータ有資格者の登録情報の変更届けについてのお願い

RCJ ESD COORDINATOR資格を取得された後、ご所属・ご住所、メールアドレス等に
変更が生じた場合は、ホームページのフォームからご連絡くださるようお願いいたします。
届出がないと、RCJからお送りするさまざまなお知らせ等がお手元に届かない可能性が
あります。お手数をおかけいたしますがご協力をよろしくお願いいたします。

変更フォームはこちら:https://rcj.or.jp/esdc-profilechange

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【6】ESD対策に関連する規格の動向(35)

今回は、ANSI/ESD STM 7.1 2020 For the Protection of Electrostatic Discharge Susceptible Items- Flooring Systems Resistive Characterization
について解説します。
この規格の目的は床の抵抗特性評価に使用することを意図し、試験方法は施工前後の
受入検査等に使用するとしています。適用範囲は人体接地やESD管理用アイテムを接地
する床システムのテストに使用することを想定しており、測定する抵抗値は表面から表面
の点間抵抗と表面と接地間を説明しています。またその規定範囲は1.0x10E4Ωから
1.0x10E9Ω未満となっています。IECにも床材評価の規格61340 4-1があり規格目的
は同じようですが、ANSIの規格の方が図説などを含め詳しく説明されています。
2 引用規格、3 用語解説、4 人体安全までは今まで解説したANSIと同じです。5項の
試験装置は作業表面の測定にも使用されている10V、100Vの電圧が印加できる測定器
本体と、2点間抵抗を測定する約2.3kg電極が使われます。6項は試験手順で低湿度と
通常の湿度の試験環境が定義されており72時間の前処理時間が要求されています。
6.1項が製品認証についてで、300mm x 600mmの測定エリアに対し十分な広さの評価
試料を用意し、試料を置く絶縁性の板を用意するとあります。試料は使用する状態と同じ
ように構成した5個以上の試料を用意します。測定には表面-接地間抵抗と表面から表
面の2点間抵抗の2種類があり、測定ポイントが図と共に詳しく紹介されています。6.2項
が受入検査方法についての説明で、施工床は500平方メートル毎に異なる5か所、敷マッ
トの場合は2平方メートル毎に1か所測定するとあります。
続いて2点間抵抗測定ですが、こちらも接地間抵抗と同様の測定エリアと回数が規定さ
れています。最後に結果報告書の記載事項について、接地間、2点間ともに測定電圧、
日付、気温、相対湿度、測定器、測定者、最大値と最小値等の記載を提言しています。
また付属書には品質検査と受入検査用それぞれの報告書サンプルフォームが記載されてい
たり、床に対する懸念事項が記載されていたりと床の評価方法について詳しく書いてあるの
で床材評価方法で困っている方には良い指標になると思います。
次回は、ANSI/ESD S 8.1 2021 For the Protection of Electrostatic Discharge Susceptible Items-Symbolsについて解説します。

規格についてはこちらもご参照ください:https://rcj.or.jp/esd-standard

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【7】静電気対策Q&A(39)

■ 帯電プレートモニタについての質問 ───────────────────
生産工程内にあるイオナイザの検査で帯電プレートモニタを使用していますが、測定時に
注意すべきことがありましたら教えてください。

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◆回答例◆
帯電プレートモニタによる測定検証では毎回同じ測定距離で測定することやプレートへの
電圧印加のタイミング、測定器の接地など基本的なことはもとよりとして以下のような点
にも注意が必要です。
帯電プレートモニタは規格準拠であっても簡易型であってもプレートに電圧を印加してその
電圧をイオナイザが放出するイオン化ガス(通常は空気)による減衰時間を測定すること
は同じです。
帯電プレートの減衰時間はプレートの大きさと静電容量によって決まりますが、この静電容
量が何らかの影響で変化してしまうと測定結果に大きな誤差を生むことになります。また
減衰させるためのイオナイザからのイオンがプレートにどのように届いているかも測定要素と
して重要なポイントです。これらを踏まえて注意点を挙げていきます。
・帯電プレートとの近接
まずプレートの静電容量は測定器の構成で決まっていますが、プレートに何か物体が近づ
くと容量が増えます。例えば測定する場所が装置内のように狭いと周囲の物体とプレート
が近づき静電容量が増えます。
この時に電圧を印加すると大きくなった容量に対し規定の電圧が印加されますので多くの
帯電電荷を減衰させることになり測定時間は本来の値よりも長くなってしまいます。逆に
電圧を印加した後に何かが近接するとプレート電圧が下がり、本来の除電をする前に
1000Vより電圧が下がり、計測がスタートしてしまうことがあります。本来の減衰時間よりも
遅くなったように見えてしまうので注意してください。
またこのような狭い場所では測定中にプレートが何かと接触し電荷が放電して測定時間が
短く出てしまうこともあるので注意してください。
・測定者や周囲の帯電物の近接
減衰時間の測定中やイオンバランスの測定中に帯電物が近接すると帯電プレートはその
影響を受けて誘導帯電を起こします。例えば減衰時間が下限値の近づいている時に帯電
物が近接し誘導電圧で早く下限値を割ってしまったり、あと少しのところで電圧が上昇し減
衰時間が延びてしまったりします。イオンバランスでも誘導電圧がイオンバランスの狂いのように
表されてしまうので測定中は帯電物を近接させないように注意が必要です。
・気流の乱れ
まず卓上型ファンのような自分で風を起こイオナイザを少し距離の離れた場所で測定する
場合、エアコンの風や室内の大局的な空気の流れがあると、イオナイザの風を押し流してし
まい、イオンが帯電プレートに当たっていないことがあります。この場合、目的の場所への静電
気対策も正しく行われていないことになるのでイオンの風が何処に向かっているかを見極める
ことが必要です。またクリーンルームのフィルタ直下に取付けられたイオナイザの場合、こちらも
イオン化された気流が環境の影響によって目的の場所に届いていないと正しい測定も対策
もできません。遅い気流は感じることも見ることもできませんがイオナイザが出す気流や、
周囲の気流などの状況をよく見極めておくことが必要です。
・パルスDCタイプのイオナイザ測定
今では一般的になりましたがパルスDCタイプの測定器を測定する際はプラスピークやマイナス
ピークを見逃さないように測定してください。パルス周波数に関係しますが、ESDSなど静電容
量が小さなものはこの影響がより強く出やすいので注意してください。またDCタイプに限らず
複数電極を持ったイオナイザの場合、全ての電極が同じイオンバランスとは限らないので、
イオナイザの近傍にESDSを近づける場合は小さなプレートで部分部分のイオンバランスの確認
も必要です。
・簡易型帯電プレートモニタの使用
規格準拠の帯電プレートモニタに比べ小さくて価格も安く使いやすい簡易型帯電プレートモニタ
ですが、規格準拠の帯電プレートと値が同じになるとは限りません。まず小さいプレートはプレー
トの静電容量が小さくなります。静電容量が小さいと減衰時間は速くなるのですが、プレートが
小さいとイオンの吸収領域が少なく減衰時間は遅くなります。簡易型には決まりがないので
この2つの要素によって標準型に比べ減衰時間が早かったり遅かったりとまちまちです。しかも
イオナイザのタイプによって標準型との比率が大きかったり小さかったりとイオナイザごとに異なる
ので、イオナイザごとに比率を求めておかないといけません。
・装置の乾燥
帯電プレートモニタは湿気や汚れなどの電荷漏洩が起きないように注意が必要です。できれば
デシケータなどの容器に入れて乾燥させておくか、チャック付きのビニール袋等に乾燥剤と一緒に
入れて乾燥させておくことをお勧めします。
これらの注意点をよく理解して正しくイオナイザの評価をしてください。